1973年、ノーベル生理学賞と医学賞を受賞したカール・フォン・フリッシュ博士は、ミツバチの鋭敏な環境感知能力と高いコミュニケーション能力を証明しました。環境の変動や農薬などに敏感に反応し、個体数が減少してしまったように、ミツバチと自然環境とは切り離せない関係にあります。
近年、世界各地でミツバチの突然の大量死や失踪現象がおきていますが、科学者たちはこの憂慮すべき現象を引き起こす主な要因を、栄養不足、免疫力低下、電磁波、農薬の大量使用、抗生物質、化学肥料、ダニの虫害、ウイルス感染などとしています。
2005年、日本養蜂協会は、上記の要因の中でウイルス感染と免疫力低下などで起こるミツバチの大量減少や大量死の問題を解決するために、バイオコントロール(従来の薬剤に代えて優性機能菌株でウイルスなどの悪玉菌を抑える方法)の分野において顕著な研究成果と実績を持つ前田昌調博士(宮崎大学農学部教授)に研究を依頼しました。
前田教授(Dr. Masachika MAEDA、専門:微生物学)は研究チームを率いて宮崎県内各地から菌株を選定し、実験室で検証テストを行いました。研究過程でミツバチがよく飛来する湧水池に気付き、その湧水から微生物群を分離、培養し、数百菌株のテストの結果、新種細菌株が優れた機能を持ち、ウイルスを抑えることも証明しました。
それから、数年間にわたって大規模な動植物投与試験、及び養蜂協会が選定した養蜂場での合同テストを行っています。そして、当該菌株と関連研究資料を特許微生物寄託センター(NPMD)に提出し、鑑定を受け、安全が証明されました。(国際微生物鑑定法、16SrRNA遺伝子配列情報分析により安全確認/(独)製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター認定安全菌株レベル1) この新型善玉菌株はミツバチ等昆虫、人、動植物、及び水生生物等、広範な分野に応用することができます。2008年に特許微生物寄託センターに寄託保管しました。(IPOD, NITE/WIPO member)
前田博士とその研究チームの研究開発に向けた技術と情熱及び民間企業の全面的協力のおかげで、新規機能善玉菌株を順調に開発することができました。
2009年7月、世界で唯一の新規機能善玉菌株からなるミツバチ専用の混合飼料が正式に販売され、この自然環境保護に根差した技術開発の効果は、ミツバチが元気に増加するため、養蜂家、果実農家など多方面で高く評価されています。また国内産蜂蜜関連商品は、国内外市場において安全、高品質のブランドとして、その価値が更に一層増すことになりました。
メディア報道
朝日新聞社記事:お疲れミツバチにどうぞ 群れを元気にする善玉菌発見 (2009年6月21日)
夕刊デイリー:ミツバチ救う微生物発見 (2009年6月18日)